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第6回 伝承とデジタル電承 その2

  • 1月16日
  • 読了時間: 8分


1. これからのデジタル開発におけるナレッジ電承の拡張について


1)設計と製造現場・設備・金型とつないだ“デジタルツイン開発” 

 CAE技術は大きく進展しているものの、流動解析や熱解析の結果と、実際の金型挙動との乖離を把握する手段が解析技術者には十分に存在していないという課題がある。

 例えば、樹脂流動解析に基づき冷却回路設計、ゲートPOINT、ホットランナー設計を行っているにもかかわらず、不良が再発しているケースは少なくない。現実として、有効な再発防止策に至っていない状況が見受けられる。

 その要因は、実際の金型内における樹脂流動状態や金型内部・表面温度と、解析結果とを直接比較・検証した事例がほとんどない点にある。このため、解析結果と実機挙動を対比・検証できる仕組みへのニーズは非常に高まっている。

 


【提言】 設計と現場をセンシングデータでつなぐ、それがKMCが提案するデジタルツイン開発だ。


真のデジタルツインとは、設計と現場をデジタルで繋ぐだけでなく、人の脳と現場の脳をつなぐことである



 製造現場のセンシングデータには以下のデータ取得と判断基準、想いや気づきのナレッジ化が必要だ


 ・金型表面温度センサ(サーモモニタリン)

 ・型内センサ(型内圧、型内温度、型開きセンサ)

 ・M2Mセンシング(生産設備の稼働監視、生産条件レシピと実データ)

 ・設備センシング(StethoscopeⅡによる保全センサ、振動・熱電対・電流・温湿度・ひずみ&圧力センサ)

 ・製造監視データ(Σ軍師Ⅱによるデータ一元管理・分析・予兆監視)

 ・金型保全データ(金型電子カルテ)

 ・設備保全データ(設備電子カルテ)

 ・部品&金型測定データ(測定電子カルテ)

それらのデータが前述のコミュニケーション機能上で、現場発信の“現トラ情報”として連動する仕掛けだ。


【ナレッジ電承のAI機能搭載計画】

ナレッジの継承・高度化において、AI機能を活用した仕組みへのニーズは年々高まっている。こうした背景を踏まえ、KMCでは成形AI「Σ軍師Ⅱ AI Plus」を2025年1月に発表した。

 開発部門および製造現場においてAIに求められる役割は、「同じ失敗を繰り返さないこと」にある。失敗を学びとして蓄積・活用するという考え方は、いわゆる失敗学(失敗は成功の基、失敗学:畑村洋太郎先生)にも通じるものである。特に製造現場においては、不良品を発生させないこと、生産を停止させないことが最優先課題であり、AIによる知見の蓄積と活用が、その実現に大きく寄与することが期待されている。

 

 一方で、設計者の業務を補助する「お助けAI」としての活用ニーズも存在するが、それだけにとどまる運用では、技術者の思考力や判断力の成長につながらず、“真のエンジニアは育たない”



 開発および製造分野においてAIに求められるデータは、センサ・センシングデータ、各種分析データ、ならびに現トラデータである。成形AIの基盤となるデータは、これらすべての不良要因データを網羅的に集約することを基本としている。

 現在、ナレッジ電承の取り組みにおいては、多様な知見に加え、判断基準、CAE結果、さらには実際の現トラ情報が体系的に蓄積されつつある。これらのデータをAIソフトウェアで活用することにより、「同じ失敗を繰り返さない」こと、そして製造現場においては「不良品を作らない」「生産を止めない」ことを実現する“電承AI”の構築を進めている。


製造現場の金型・設備・生産条件などの製造情報をΣ軍師で収集、ナレッジ電承と連携
製造現場の金型・設備・生産条件などの製造情報をΣ軍師で収集、ナレッジ電承と連携

2)EXEDY様と取り組んだプレススプリングバッグのナレッジ化


 プレス設計における板金曲げなどのスプリングバックの見込値は、板厚のばらつき、材料塑性、硬度、圧延方向、プレス油、摩擦係数、板厚と曲げのコーナーRの関係値など変動因子が多岐にわたるため、目安となる値はあるものの部品設計の都度考えながら設計する。従って、熟練設計者の経験、知見が大きく部品不良を左右する。

 そこで、CAEデータと実際のプレス金型、部品測定値からスプリングバッグを計算する方式を考案し、ナレッジ活用するシステムを開発した(特許)


部品設計・解析・生産技術・製造現場をつなぎスプリングバックノウハウを支援する“電承“
部品設計・解析・生産技術・製造現場をつなぎスプリングバックノウハウを支援する“電承“

製造のノウハウシステムで一番難しいのは、製品、金型、生産方式/設備によって毎度条件が異なる事への対応だ。常に一品料理に近く“方程式化”し、一般化することは現状では困難だ。唯一の方法は、上図のように設計の設定値に対して製造現場の寸法測定値からスプリングバッグのデータを蓄積し、相場値や感度値という形式でCAEと金型設計にフィードバックする仕掛けが現実的に有効な手段だ。

このような不確定なノウハウに対しては、ナレッジ電承で設計・CAEと現場データをつなぐ手段が設計者にとっては最も有効である。これがデジタルSE-TOOL(サイマルエンジニアリング:同期設計)の仕掛けだ。


【格言】

 影響因子が多すぎて標準化できない経験則は、CAE/設計と製造データをつなぎ自動処理すべし


【提言】

変えてはいけないもの、それは製造現場の原理原則と5S、慮る精神、人を大事にする製造環境

            

変えなければいけないもの、人の成長を阻害する古いしきたり、デジタルとの融合した製造、挑戦

 そのための要素技術開発と研究開発、イノベーション開発の実践


引き継がなければいけないもの、それは“次工程はお客様”の精神、お客様本位の“こだわり”ものづくり

 人材本位の製造と和の精神を引き継ぐデジタル人材の育成


守るべきもの、それは社員と家族の幸福、企業は人なりの精神


人生100年、社会人人生80年時代にある。益々経験値は重要になり、その知見はデジタル化され伝承される。何れにしても自己改革・イノベーションが会社を変革する。中国などの競争国・企業が問題ではない。


2. デジタル社会の人材育成


1) 日本製造の勝ち筋の一つは、大和民族のDNAを生かし、電承文化の昇華にあり

 デジタル製造とは、無駄を排除し、省力化と高い生産性を両立した製造体制を追求すると同時に、新たな人材育成の環境を構築することに本質がある。デジタル技術の活用により、これまで可視化できなかった製造プロセスから新たな知見が創出される。


 これらの知見を次世代へ電承することが求められるが、単なるデジタル情報の蓄積だけでは、真のノウハウ伝承や価値創造には不十分である。数値やデータのみでは、現場で培われた思考や判断の本質、すなわち“技術の神髄”を十分に伝えきることができない。

 大和民族のDNAを活かしながら、デジタルと人の知恵を融合させた「電承文化」を昇華させていくことが、これからの製造業において重要である。


 具体的には上記【提言】を実行していくことにある。ややもすると完全自動化、Smart FACORYで人を軽視した製造体制に走り、リストラや業務強化に走り、経営の人的資源を軽視する経営者もいる。


 日本人らしさとは何だろう:競争社会ではあるが、誠実、控えめ、真面目、争いを避ける、四季を大事にする、先輩を敬う、仲間を大事にする、空気を読む、慮る、人にやさしい、礼儀、おもてなしの精神、、、会社や製造DX、Smart工場でも継承しなければならない


2)改善とデジタルカイゼン

 改善でトヨタ様は年間数百億円の原価低減により利益を絞り出す、その風土が会社にあり人材育成もしっかりしている。まねても定着が難しいのは、その会社風土にあり、単にトヨタ式生産方式を本で学んだり、コンサルを入れても“改善”効果は得られず、長続きしない。

 最近、製造現場におけるグループ改善活動の実施状況が低調な傾向にあると感じる。

製造現場への外国人実習生も多く採用され、言葉の障害もあり、日本のものづくり文化の継承がおろそかになってきたと感じる。工場現場の視察にいけば一目瞭然で隠しようがない。


 デジタル時代の伝承、文化継承、人材育成には“電承による新たな企業文化創造”が必要になってきた。“デジタルカイゼン“とは、現場データ・設備・金型データ、現トラ等のデジタル情報を活用し”新たな知見”としてカイゼンしていくことだ。その時代に合ったシステム“電承”が必要だ。


3)電承と人材育成

 戦後のものづくり人材育成手法を変革する必要が生じてきた。残念ながら現在の現場職人の多くは、デジタル教育を受けておらず、逆に若者はデジタル社会で育ってきた。そのギャップは大きい。PCやタブレット、センサなどの導入で職場環境が次々とデジタル生産設備やデータを活かした業務・製造体制に変革してきているが、ベテランと若手の融合ができないで苦慮している。

 デジタルだけで補えない金型などのすり合わせ、部品の組み合わせ合わせなどは、まだまだ職人的技能も継承しなければならないが、センサ、設備センシングなどから得られるデータをカイゼンにまで昇華しきれていない。新たなデジタル知見を活かすためにはベテランの経験値・判断ノウハウは必須で、システムとして完成させる必要がある。また、それを活用できるデジタル人材の育成が急務だ。どうすればよいか。


【提言】

デジタル人材育成は社内の工場現場で育てることが一番有効だ。そのためのデジタル投資で場を作りインストラクター、教師の育成から始めるべきである。それが社長に仕事だ


 smart工場と言っても、デジタル設備保全を担う人材の育成は不可欠であり、製造条件のレシピ改善、製造監視センサの導入やセンシングシステムの構築、さらには判断プロセスのデジタル化といった取り組みを進める上で、人の役割は決して代替できない重要な要件である。


  


  次回は開発隣国を目指す日本製造業と特許戦略 その1


 
 
 

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