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第4回 製造デジタルデータの活かし方・不良を作らない、生産を止めない手法 その2

  • mnakata85
  • 11月14日
  • 読了時間: 7分

2. センサ・センシングとそのデータによるデジタル人材育成


デジタル製造には現場作業者や生産技術、測定や品質管理まで必要だが誰も認識していない

人材育成はどうすればよいの?定着・手の内化したいがどうすればよいの?


 センサはあくまでもアシスタントであり、熟練工の五感と経験値にはまだかなわない。なぜなら人間というセンサは製造にかかわる全ての状態を把握し、瞬時に判断する能力がありとてもかなわない。とは言ってもこれからの人口減では頼れない。AIに期待する向きもあるが、今は現場・設備データが種類・量ともに少なくAIにかけても分析できない。そのためにも、一歩ずつセンサを導入し“試行錯誤を繰り返し、経験を蓄積”するしかないと考える。勿論そのスピードは大事だ。製造現場のデジタル教育は製造現場で行われるべきだ。AIもアシスタントとして運用するのであれば十分に使いこなせる(Σ軍師ⅡAI Plus)。間違ってもAIを過信し、頼りすぎると考えない人間が育ってしまうので危険だ

 例えば、当社のサーモモニタリンという金型表面温度センサを活用すれば、熟練者でも見えなかった温度変化や温度上昇の傾向・部位ごとの変化を可視化することができる。センサは、今までの五感を補うだけでなく、新たな高度化され可視化・監視能力が備わる。画期的なアシスタント役と言ってよい。ただし、温度上昇の真の原因が金型の冷却パッキンの劣化や型内冷却管の錆びや冷却水の水質変化まで、今はセンサで特定ができないが、金型表面温度異常のシグナルとなって即座に関連項目のチェックは可能だ。これがセンサと人との融合だ

 最近の成形現場の例を紹介すると、作業だけに注力し、製造のTQCなどの現場力・理解力・改善力不足が目立つ。先ずは、デジタル化の前に課題を認識する調査力:現状把握と特性要因図からスタートすべきだ。生産に追われてまとめる時間もなく放置された現場が実に多い。当社は、ベテラン生産技術コンサルタントがお客様に現場にいて、一緒に、不良データ収集やヒアリング、分析を実施している。ソフトや機器販売だけではデ時あtル製造は進まない。


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 樹脂成形の場合、①温度②圧力③時間④量を一定量産できれば不良は出ないとされる。右グラフはそのデータ管理をΣ軍師Ⅱと金型IoTを使って徹底した作業者への教育指導と運用規定を守ることで、不良率を6か月で激減した事例だ。成功の秘訣はデジタル製造インストラクター(指導員)にあり、現場作業者をリードすることだ

Smart FACTRYなど完全自動工場もありだが、並行してデジタル生産技術者とデジタル保全員、指導員を育てないといけない。必ず、現場やセインサ技術にはその候補者がいるものだ。


【格言】 「デジタル製造・デジタル人材育成」の成功の秘訣は「デジタル製造インストラクター」育成にあり



3. サプライヤー戦略と多極化するデジタルグロ-バル生産体制


内製率は25%、デジタル製造はサプライヤーとどうやって付き合えばいいの?


 サプライヤーとのデジタル製造連携体制の構築は日本にとって生命線となるだろう。そのためには、取引契約などをデジタルという視点で見直す必要がある。直近の事例・課題で見れば、サプライヤーへの金型の無償保管問題がある

 昔は、次、発注するからと無償で保管させていた悪しき慣習があるが、公正取引委員会などが中小企業いじめとして大手トヨタ自動車なども摘発され、毎月どこかが摘発され増えてきた。これも、部品取引契約があっても金型までは追いついていないのが現状であり、管理システムの導入とその運用については早急な対応が望まれる。KMCでは「金型貸与先管理ソフト」で金型QR・棚QR・作業者QRとタブレットで簡単に実棚できるシステムを販売している



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 コニカミノルタ㈱は、いち早くこのソフトウェアを導入し、全世界400社以上、10万型の金型管理を実施している。購買工数が半減し、金型紛失もなくなり“現棚”という国際会計基準にも対応できている


 勿論、製造・設備・金型を熟知したデジタルソリューションパートナーも欠かせないことは明白だ。


【格言】一人・1社では何もできない、共存・共栄・共創が日本流、サプライチェーンをデジタル化せよ


4. デジタル製造のデータを生かす事例の紹介


1) 不良を拡散させないセンサデータの活用:トリガ信号からの設備FBシステムが有効

センサデータの有効活用は、目的の不良を出さない、拡散させないという“活かし方”にある。各センサデータには異常値を監視する閾値管理機能があり、その異常値から“トリガ信号”として設備へFBすることができる。当社のサーモモニタリンを活用している自動車メーカ、精密機器メーカの事例を紹介する。


①データを取る・見る事例

 金型の表面温度の異常は部品品質不良の“鏡”であり、作業者は、毎日作業開始時や量産中にチェックしている。従来はハンディサーモカメラで検査している例が多いが、定点観測ができず不定期のため異常の防止・発見にはつながっていない。また、記録もなく作業者の負担も大きい。

 その点、サーモモニタリンは設備と連動を見て記録するのではなく、自動撮像でその温度データも自動記録で作業者の工数削減に大きく寄与している。作業者はサーモ画像を監視するのではなく、システムで温度データの計測と異常を自動監視するので全く負担はない。また、必要に応じてデータをさかのぼって見ることも可能だ。また、ダブルトリガ機能で製品と金型表面温度も同時に監視でき、ヒケやシルバーなどの発見にも寄与できる。


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②データを分析、生かす事例

 データ異常があれば、警告灯で知らせ、且つ、異常値は“トリガ信号”として設備にFBされ、非常停止やダイカストでは離型剤の噴霧量の自動調整なども可能である。樹脂成形の場合は、異常品は取り出しロボットで不良箱への集められる仕組みだ。是非、現場に足を運び課題を聞いて、デジタル化を推進してほしい。

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 センサ単体では単なるモニターとしての役割でしかない。作業者は忙しく見ている暇もない。生産技術も人数が少なく、デジタル化で仕事が増えると嘆く。

 五感に代わるセンサは無線で自動取得、データ処理も自動、さらに目的の不良撲滅、予防には“センシングシステム“として導入し、デジタル業務・デジタルQC工程表等で運用をすることが重要だ


【格言】データを生かすという事は不良を出さないこと、設備・金型不具合を防止すること

    そのためにはデータをFB(フィードバック)し製造をコントロール・制御すること


2)  デジタルデータ活用に向けたデジタル人材育成:デジタル製造に手の内化事例

 デジタル製造の現場運用に向けて、デジタル生産技術者・保全人材:インストラクター育成が成功への準備だ。

 KMCでは、自動車メーカやTier1に対して機械加工や設備の基本教育・デジタル製造教育の実施、大手機械販売商社へのDXソリューション教育など実施している。教育スタイルは、できる限り現場での実地教育、そして机上でのセンサ操作、データ分析などセンサ・センシングシステム等、現物を触っての教育スタイルだ。

 管理者・経営陣TOPのデジタル教育も必須と考える。何事も優秀な経験のあるデジタル先生は重要だ


日本の製造業はどこに向かうのか。これで中国、欧米に勝てるのだろうか。欧米流か日本流か、挑戦は続くが始めるしかない。答えは「利益」と「品質」にある。


ものづくり・製造業として勝ち切るためには、DXソリューションに使われず、使う側の「手の内化」が大事だ。まだ、始まったばかりだが時間はない。「デジタル製造」やってみなはれ!


【格言】 デジタル製造と言っても3元主義を貫くべし:デジタル現場、現地、現物で手の内化




次回は、第5回 デジタル製造、Smart工場の取り組み

 
 
 

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