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第4回 製造デジタルデータの活かし方・不良を作らない、生産を止めない手法 その1

  • mnakata85
  • 11月13日
  • 読了時間: 11分

1. デジタル製造は目的を明確にし、現場を直視し課題に沿った対策を議論すべし


取ったデータはどう活かすの?効果がでない!


 よく聞く質問だが、効率化という効果だけを望んだ活かし方では“得られる果実は半分だ”。目標に沿った現場課題を理解した上で、戦略を立て取り組まないと現場・敷いては現場・工場・会社が崩壊する危険もある。

 デジタル製造は、自動化や不良削減、生産停止をデジタルデータで防止し、生産性向上を目指すことを第一の目標としている。さらに第二の目的として、データを通じて人の経験や判断をより効果的に活かし、人材育成につなげることも重要なポイントである。先ずは自分なりに書き出してみてください。


デジタル製造への課題
デジタル製造への課題

【格言】戦略を立てるべし!生産改革軸と人材育成軸の両面で考えよ!


1) センサ・センシングシステムの選定:古い設備対応、保全に易しい無線センサ、センシングの拡張性


センサはどうやって選ぶの?データの見方を教えてほしい!


 デジタル製造の基本は製造現場の設備・金型のセンサの選定とセンシングシステムから始まる。

 センサ選定のPOINTは古い工場設備にあり、いくらスマート工場、最新のデジタル生産設備導入と言っても過剰投資は減価償却で苦しむことになる。古い設備へのセンサは後付けセンサでなければ設備改造を伴い困難であり、無線センサでなければ導入は難しい。また、デジタル対応の設備機械と言っても目的の情報は得られない。

 例えばプレス機を例にとると、目的の不良削減には金型起因不具合が70%であり、“金型センシング対応”が同時に行いえるセンシングシステムでなければ役に立たない。設備メーカの弱点は、自社の設備機器のセンシングは行うが、ユーザー目線の金型や付帯設備一体のセンシング対応は行わないことだ。なぜなら、“金型故障やメンテ不備など金型の起因の不具合はユーザー責任“という立場だからだ。

 センサの選定は無線式を中心に選定し、センシングは、製造にかかわる全ての機械・付帯設備・金型を連携できる情報を網羅できるM2Mセンシングシステムでなければならない。


注)M2MとはMachine to Machine:デジタル製造では金型を含めた全設備のデータが連携システムと定義


【格言】センサは無線化の時代、中途半端なセンサ追加は意味をなさない!

    デジタル製造設備の一部、古い製造設備への対応、五感をセンサデータに変換せよ!

樹脂成形における無線ハイブリッドセンシング
樹脂成形における無線ハイブリッドセンシング

2)設備/金型用センサの選定と無線方式と有線方式センサ、その運用技術


金型は確かに問題がある、金型のセンサはどんなのがあるの?実績は?


 例えばプレス不良の撲滅には、材料からプレス機、金型の全ての変動因子をモニタリングする必要がある

 何故なら、不良は一つのセンサ・不良因子では原因は不明だからである。不良は複合的な要因で発生するため、中途半端なセンサ導入はかえって現場を混乱させしまう

 KMCでは金型内部を可視化する「無線式型内センサ」を開発し、量産中の金型内部の挙動・変位をリアルタイムに可視化・監視できる画期的なセンサを販売している。各自動車メーカ・Tier1などが積極的に採用し、不良の撲滅に向けて知的金型に取り組んでいる。


金型内部を可視化する「無線式型内センサ」
金型内部を可視化する「無線式型内センサ」

【格言】不良の最大の原因は金型にあり、型内センサで内部挙動を可視化(知的金型化)せよ!


 また、設備停止問題については、後付けの無線センサが有効である。古い設備程ほど故障が多く、いつ発生するかわからない故障リスクを抱えており、無線リモートでの自動監視が求められる。

 また、日々の設備保全や定期保全についても、無線センサによるリモート保全なら、作業者の点検工数や機械日報、報告などの工数も大幅に削減できる。通信方式には、無線式センサはWi-Fi 2.4GHz帯が一般的に多く活用されている。

 当社では、2.4GHz帯のWi-Fi方式を採用した無線通信に加え、センサ本体の送信機とPC側の受信機を1対1で接続する通信方式の2種類を、現場の通信環境に応じて提案している。近年では、工場内でWi-Fiカメラなどの無線機器を多用している企業からは、通信干渉を避けるために有線方式を求められるケースが増えている。また、海外工場など通信環境が不安定な地域でも、有線方式が採用される傾向がある。


今後は、5Gや6Gといった次世代通信環境に対応したセンサも増えていく見込みだ。いずれの場合も、まずは工場内の通信状態を測定し、最適な方式を選定して導入することを推奨する。


無線センサによるリモート保全
無線センサによるリモート保全

格言】 設備停止予防は現場の保全力にあり、保全員が少ない今、無線センサでリモート・デジタル保全


3) センサデータの分析・不具合予兆監視技術、AI機能活用


センサのデータをどう役立てるの?不良予防や生産停止問題に使えるの?AIソフトは使えるの?


 センサで取得したデータは、PCなどでグラフ表示や分析を行う。この一連の仕組みを「センシングシステム」と呼んでいる。

 KMCでは、製造現場でデータを収集・処理する「Σ軍師Edge」と、クラウド上のデータベースで情報を共有・分析する「Σ軍師Ⅱ」を組み合わせて活用している。これにより、国・地域・工場・事務所・管理者といった各拠点や担当者が、ネットワーク端末PCを通じて同じ情報をリアルタイムに利用できるシステムを構築される。生産技術者が少ない今、他拠点の生産ラインをリモート監視・指示できるシステムである。

 最近はセキュリティからプライベートクラウドの運用ユーザーが増えている。製造現場では、Σ軍師Edgeにより、設備データ収集・グラフ監視・ローカルDBなど現場設備監視、閾値監視/判断、異常警告発信などに活用している。Σ軍師Ⅱは、クラウドDBにて他拠点の工場やサプライヤーまで含めたネットワークを構築し、大量のデータを集約することができ、データ分析、不良・不具合の予兆管理を行なうソフトウェアである。

 Σ軍師Edge/PCにはデータアップロードソフトが用意されておりΣ軍師Ⅱと連動するシステム構成となっている。さらにクラウド上でAIソフトがΣ軍師Ⅱに連動し、「Σ軍師ⅡAI Plus」による各センサ・センシングデータからパレート分析を行うことで、生産技術者の不良原因特定のアシストを行い、大幅な工数削減が可能となっている。


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 製造現場のデータ収集では、すでに導入済みの他社センサも多くあり、各センサに依存しないデータ収集ソフトとシステムであることも重要なPOINTになる。

 当社のΣ軍師Edgeはそのニーズに対応しており、すでに実績もある。他社センサを無線化する「4chアナログ無線ユニット」も提供しており製造現場のデジタル化ニーズに対応している。何れにしても、AIソフト活用は、製造現場のセンサ・センシングがなければ意味がない。


【格言】 取ったデータは製造現場・ラインで即活用するEdgeソフトと遠隔監視、分析のクラウドソフトを組み合わせるべし。AIはあくまでも不良。不具合原因追及のアシスタント


【センサ・センシングのデジタルデータの使い方、分析、不良・不具合の予兆管理】


センサは知っているがデータをどう使えばよいか知らない、不良・不具合予防に役立つの?


 当社のStethoscopeⅡ:無線センサを事例に紹介する。現状は有線センサが主流の世の中であるが、今後数年内に無線式に置き換わることは必須だ。通信障害を気にされる諸氏も多いが、この3年でトヨタさん等大手自動車メーカの現場にも普及してきた。通信規格は3G・4G・5Gとおおよそ10年単位で更新されてきた。工業用の920Ghz帯や6Gも開発が進んでおり、今後は加速すると考えてよい。しかしながら、重要なことは、製造現場にやさしいセンサで案ければならない。特に設備保全には無線がよい。

 むしろ課題は、センサデータを作業者が現場で活用できていないこと、生技が分析に活用しているがEXCEL、現場職人の五感・経験をセンサに置き換えられていないことであり、使う側の問題が大きい。センサデータの種類を理解しきれていないことが原因だが、そんな教育も受けていない現場作業者には酷である。

 例えば振動/加速度センサデータは、実効値、平均値、ピーク値、CF(クレストファクター)の4モードがXYZの3軸でセンシングできる。切削加工の製造現場では、工具が折れる、摩耗が見たい、加工不要になる等の課題を抱えており、当然、加工機、特に主軸周りの異常をセンサでとらえたい。加工設備には個体差がありFFT解析にて、機械の固有振動を周波数解析と合わせて分析も必要だ。ベアリング等回転体異常にはCFデータの監視が望ましい。目的に応じたデータを選定し、且つ現場作業者は五感でその異常を感じ取ってきたのでわかるはずだ。そんなデータ活用教育がないから現場でセンサデータは生かされない。生産技術者はもっと高度なデジタル教育が必要だ。


目的に応じたセンサデータの有効活用
目的に応じたセンサデータの有効活用

 センサ・センシングのデータ活用にはリアルタイム自動分析が最も効果的である。特に生産技術者にとって不良や設備不具合の影響原因を後でEXCELで集計・分析することが多いが、今後センサが増えるとEXCELでは不可能になる。数百や数千の不良因子を自動区分けし、時系列に並べ全センサデータから異常を予知するにはそれなりの分析ソフトが必要になり、生産技術の分析能力を格上げする必要がある。生産技術にとって重要なことは不良のメカニズム分析であり、根本の不良原因の絞り込み、予兆監視ロジック、それが目指すデジタル生産技術のデジタル化だ。

 KMCでは、センサと同時にΣ軍師ⅡというM2M分析ソフトを提供し、分析・予知予防監視機能、それに±3σなど統計処理などの品質管理機能も実装され、現場で活用が進んでいる。

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【格言】センサ・センシングデータは生かしてなんぼ!見えなかった不良事象をデジタルで自動可視化せよ!


4) 世界のデジタル覇権戦争とプラットフォーム戦略:KMCはデジタル製造プラットフォーム生産電子カルテ


世界のデジタル化はどうなってんの、なぜ日本の製造現場のデジタル化は遅れているの?


 ドイツは国策で製造のプラットフォーム:Industry4.0を推進している。2015年ドイツバイエルン州駐日代表部代表Dr.C.Geltingerさんの招待で「インダストリー4.0-ドイツからの報告と日独協力の可能性-」と題した日独セミナーで講演した。両国の政府関係者や大学、シーメンス、日本からは経産省や三菱電機等が参加し意見交換し、大きな注目を集めた。インダストリー4.0って何?それが日本のデジタル製造の始まりだった。

 2015年、ゲルティンガー博士と東京大学稲田先生とは横浜や埼玉で講演を行い、東京では毎年講演会を実施して“デジタル製造”の普及を展開した。ドイツの狙いは“製造プラットフーム“覇権とその規格を握ることにあった。シーメンスはPLC等の機器には依存せず、どのメーカでもこだわらない、我々は”産業用IoTプラットフォーム「Mindspher」を開発・販売して世界の製造を握ろうという戦略だった。勿論、USはサービス・セキュリティ指向のIoT戦略、日本もメルケル首相の来日をきっかけにドイツ風の「IVI」等を推進中だ。また、自動車品質規格「IATF」などドイツ、アメリカ、日本共通で進んでいることも見逃せない。


 私が提案したいのは、空中戦のデジタル推進だけでなく、地上の製造現場のデジタル化が重要という事だ。みな、ビジネスと効率化ばかり考えて、現場を取り残している。ホワイトカラーの効率化それでもは良いが、デジタル製造にはセンサ・センシングが必須で、まだその難しさと重要性に当時は誰も気が付いていなかった。もしかして今も同じかもしれない。


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 2018年、なり物入りでスタートした“中国製造2025”。KMCは日本企業で唯一出展し、TVなどの取材を受け注目された。“日本はなぜ5Gやらないの?が質問の最初だった。巨大な展示場は港湾管理・物流など5Gデジタル一色だったが、中国企業の各ブースを見学した印象は”センサがない・M2Mがない“製造には程遠い”出展だった。当時は、半導体に興味があり製造には興味がないのだろうと思った。それは、今でも変わらないと思う。政府の投資先(補助金)が順次掲示版に表示され、その金額のケタには驚くばかりだ。


 KMCはあくまでの製造現場のデジタル化に特化したソリューション開発を行っている。なぜなら、利益は現場で産むものだからだ。IoTは、国、工場、製造ラインの人・モノ・金を最適化するためには欠かせない。


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 このIoT製造プラットフォーム「生産電子カルテ」は、2017年のコニカミノルタ社とのマレーシア工場のデジタルマニュファクチャリングシステムで基本パッケージがつくられ、現在の「電承:生産電子カルテ」に進化した。IoTソフトウエアは独立したDB構造となっており、中小企業向けにはコンパクトな「製造プラットフォーム」も提供できる。最大の特色は、M2M・センサ・センシングシステムを連携できるIoTプラットフォームであることだ。


【格言】日本のデジタル戦略の勝ち筋は現場力・改善力をグレードアップした「デジタル製造」にあり

    大手も中小企業も製造現場の「製造プラットフォーム」を構築せよ!




第4回 製造デジタルデータの活かし方・不良を作らない、生産を止めない手法 その2へ続く


 
 
 

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