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特集編1 その2 日本製造業の勝ち筋を考える、「儲かる製造業へのパラダイムシフト」

  • 2月4日
  • 読了時間: 8分

 従来、当たりまえと考えていた製造の在り方を認識や思想、企業・社会の全体価値観を劇的に変えていく「儲かる製造業へのパラダイムシフト」=素形材産業のパラダイムシフトを考えてみたい。それを単に一般論で論ずるのではなく具体的な事例・ソリューションで紹介する。


1. 具体的な素形材業種ごとの産業ビジョン・デジタル製造指針 素形材産業の中核・金型産業を再興せよ


1) 金型産業

 私は日本金型工業会の技術委員として「令和の金型産業ビジョン」を編纂した一人である。中里専務理事と業界の会合の後、昭和生まれの仲間で懇親会を開き、韓国や中国の台頭で落ち込んでいる日本金型の再興にむけて“お酒の力も借りた勢い”で大いに盛り上がり、“方向性を示そう”ということになった。

呑み助4人衆:小出会長・岩渕副会長、中里専務理事・佐藤委員

 


令和2年編纂の「令和の金型産業ビジョン」戦略・戦術・計画
令和2年編纂の「令和の金型産業ビジョン」戦略・戦術・計画

 残念ながら、日本の金型産業は1991年をピークに2021年と比較すると生産高28%減少、事業所数64%減少しているのが現実だ。

 

2)具体的な「シン令和の金型産業ビジョン」を考えてみたい

①だれに、何を

 金型の販売先としては、まず日本の基幹産業である自動車産業を考えてみよう。

 日本自動車工業会の資料では、自動車製品出荷額では72兆円、設備投資は1.6兆円、研究開発は4.3兆円の規模で主要製造業の約20%を占めている。(2024年度、2023年度比14%増)

 

 自動車1台に対する部品製造に占める金型比率は80~90%といわれている。エンジン、ミッションも1部品として数えると1台の自動車には約3万点の部品があり、使用される金型の数はその約10倍にあたる30万型にも及ぶ。車種は毎年、100車種を下らない数が生産されている。

 つまり、単純計算すると、毎年およそ3,000万型もの金型が新たに生み出されていることになる。(誰も積算した人はいない。なぜなら金型BOMという概念がないから。)

 

 エンジン・ミッションなどの鋳造金型は寿命上、1部品に対し20型は製造する。そして補修部品供給責任上、15年間はサプライヤーに保管される。一体、今の日本に何型存在するのだろう。そのすべてが素形材産業としての金型事業者・メンテ事業者・部品事業者のビジネスの種である。自動車用金型は日本にとって必要不可欠で守らなければいけない種であり、材料のレアアースと同じだ。


日本の基幹産業である自動車・金型に占める自動車用金型
日本の基幹産業である自動車・金型に占める自動車用金型

 


②自動車メーカが望む金型とは何?

 では、どうやって金型を守るのか?を考えてみたい。日本の高精度な金型用工作機械は、中国で最も導入が進んでおり、金型部品の精度においては、すでに世界基準に達している。さらに、中国では5軸加工機や複合加工機、ロボットの導入も進んでおり、納期は短く、人件費も安いため、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)の面では、日本を上回っていると言える。

 一方で、日本の強みは、部品同士を微調整しながら仕上げる「すり合わせ」を重視した金型組み立て技術にある。実際には、中国や韓国などで金型部品を生産し、それを日本に輸入して最終的な金型組み立てや微調整を行う企業が多く、これが現在の実態だ。

しかしながら。日本の金型メーカーの多くは中小企業であり、金型職人の不足が深刻な課題となっている。

 

 

 【金型のシンの課題】

 金型は部品を生む“雌どり(金型)”みたいなものだ。生まれの良い卵を消費者(自動・大手Tier1メーカ)

は望んでいる。よい部品を生む、壊れない金型はもちろん、不良を生まない金型が最も重要なニーズである

 それと、部品製造の現場では、金型劣化で金型突発故障や急なメンテや部品交換で生産が止まる。部品製造不良の70%は金型起因である。しかるに、良品を生み、劣化が予測できる金型が最も必要な金型といえる。



 【自動車メーカや大手Tier1と進めているデジタル金型開発】

 部品不良をなくすには、金型内部の挙動“動的変位”を可視化する必要がある。金型トライの時は良品でも量産中に不良を生む。そのメカニズムがブラックボックスだった。材料投入から金型経由して部品となる過程とリアルタイムに可視化する技術開発だ。


型内センサ:圧力・温度・棚開き(ひずみ)をリアルタイムにセンシングする金型技術が進行中
型内センサ:圧力・温度・棚開き(ひずみ)をリアルタイムにセンシングする金型技術が進行中

 

 量産工程における不良削減は、日本の製造業がこれまで強みとしてきた分野だ。しかし、大企業であっても不良の原因を突き止めることは容易ではなく、現在も科学的なメカニズム分析による解明が求められている。原因を明確にできれば、さらなる利益につながるため、各社は研究開発に力を注いでいる。

 

 その際に重視されてきたのが、「現場・現物・現実」を重んじる三現主義だ。実際の現場を観察し、事実に基づいて問題を解決する――これこそが日本の製造業の伝統芸だ。机上の理論や仮想空間だけでは本質的な解決には至らない。

 

 では今後、金型メーカや中小の部品メーカは、どのように生き残っていくべきなのか。私は、金型メーカとの技術格差の拡大や、素形材メーカの存続に強い懸念を抱いている。しかし一方で、大手製品メーカの金型内製率は約20%にとどまっており金型サプライヤーとの強固なサプライチェーンを構築できるかどうかが、今後の国際競争における勝ち筋になることは間違いない。

 

 【素形材産業・金型企業への提言】

 

 金型だけを作る時代は終焉する。1円でも安い金型から高くても不良が起きない金型へとニーズが変わるのだ。不良が出るのは金型屋のセイではないと考えるかもしれないが、不良を起こさない金型システムを提供することを金型屋の使命と考える時代がすぐそこに来ている。それが付加価値向上作戦だ。

            

 

③どうやって、いつから儲ける。

 ポイントはサプライチェーンにある。例えば、自動車メーカ、Tier1の製品メーカの悩みは、金型メンテナンスにある。型保全部隊には人的投資も少なく、金型製作メーカに頼っているのが現実だ。しかしながら、発注側はいつメンテするのか、どの型部品を交換するのか、なぜその部品だけ摩耗するのか、破損するのか、全くわかっていない。その原因は、単にメンテ作業を委託しているだけで、その不良原因を追究しないからだ。型技術者会議にて、自動車メーカの解析の課長さんに、“型保全の現場に行ったことがありますか?”と失礼にも聞いたことがある。型費が5倍になっても不良が出ない、生産が止まらなければお客さんはお金を払う。それが付加価値だ。その金型ノウハウがシンの財産であり、絶対に海外に流出してはならない

 金型屋・部品屋の成長戦略をスマイルカーブで表現すると

第5回デジタル製造から抜粋:川下の金型サービス、川上への壊れない・不良をない金型がチャンス
第5回デジタル製造から抜粋:川下の金型サービス、川上への壊れない・不良をない金型がチャンス

 勿論、生き抜くためには技術開発とその人材含めた設備・システム投資は当然必要となる。投資には原価低減投資と成長戦略投資があり、経営者は常にその投資判断が求められる。失われた30年、高市首相の言葉を借りると、今こそ成長戦略投資の時が来た。

 日本金型工業会の企業は兼業農家(金型と製品)が多い。その先を考える時代が来たのだろう。安かろうではなく、日本の金型の付加価値を今一歩前進させよう。実はその技術・ノウハウはみんなが持っている。貴重な財産だ。

 

【素形材:金型サプライチェーンの提言】

 

 自動車・製品メーカは金型メーカと切っても切れない依存関係にある。一昔前は協力サプライヤーを育てる風土があった。協豊会や宝会、リーマン後、一人で生きてくださいとその親子関係は見直されたが、製品はサプライヤー、特に金型メーカとは受発注が継続されてきた。今こそ、“旧来の関係協力会“ではなく、オープンでお互いを研鑽しあう「日の丸金型協力組織」「デジタルサプライチェーン」が必要な時だ

 私も2025年8月、日本金型工業会・会員企業50人の経営TOPとスズキさんの金型工場の見学会を実施し、大変好評だった。技能伝承の仕組み、デジタル電承の取り組み、デジタル計測技術や工具管理、加工技術、安全対策など興味深い内容だった。これからも、自動車メーカ、大手Tier1と会員企業とのマッチングの機会を計画する。是非、大手企業はサプライチェーン強化、強靭化を率先して一緒に取り組んでほしい

儲かる製造業へのパラダイムシフト」=素形材産業のパラダイムシフト
儲かる製造業へのパラダイムシフト」=素形材産業のパラダイムシフト

 政府にも、是非、素形材産業の育成、強化、強靭化をお願いしたい。職人がまだいる今が最後のチャンスである

 

(余談)昭和は試作屋と金型屋は儲かるといわれた時代だった。社長はベンツ

 インクス時代に、試作と金型ビジネスを展開していた。客先から、“おたくは20万円の金型鋼材を買って200万円の金型として売れる、10倍の付加価値だ、うちは1000円の製品を作るのに700円の部品を購入して諸経費を引くと10%しか儲からない“ 

 

 試作品では、原価が1,000円程度のプラスチック材料を彫刻機で加工し、10万円で販売する。これは金よりも高い付加価値と言える。このように考えると、金型産業は本来、高い付加価値を生み出せる分野であり、今こそ金型は「儲かるビジネス」へと転換すべき時期に来たと言える。

 

 家に閉じこもらず、お客様のニーズを開拓し、想像力を磨き、どんどん外に出るべきだ。そしてデジタルで強靭化すべき時である。

 


⑤いつから、何から始める?

 それは今でしょう!じり貧にならないうちに、職人がまだいるうちに実行に移すべきだ。それは、若手、女性の活躍の場を増やす日本流の「目指すはデジタル職人育成」だ

  

(余談)

 当社もたかが20人そこそこの中小企業だ。金型を中心に製造現場のセンサ・センシング・IoT等のソリューションを開発している。リーマンショック後に開業、コロナ禍も社員みんなで乗り切った。お取引様はスズキさん、HONDAさん、トヨタさん、日産さんなどで売上比45%。

 人数ではない、ソリューションはすべて内製が基本的な経営方針、決して50人以上にしない

 

経営者に問う「現場発IoT・M2M革命」でデジタルカイゼンが会社を救う
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 続きは樹脂成形産業について具体的に「儲かる製造業へのパラダイムシフト」=素形材産業のパラダイムシフトを考えてみたい。一般論で論ずるのではなく具体事例・ソリューションで紹介するので楽しみにしてほしい。



 
 
 

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