Case13 樹脂・ダイカスト サーモ&型内センシング 事例インタビュー
- mnakata85
- 2025年12月25日
- 読了時間: 6分
更新日:2025年12月26日

樹脂成形金型・ダイカスト金型、センシング金型と五感のデジタル伝承

2025年7月3日の第一回KMCユーザー会&プライベート展示会にて大好評だったスズキ株式会社の組谷様にスズキ流「電承」の取り組みについてインタビューしました。
第一回KMCユーザー会・プライベート展示会ではスズキ株式会社 組谷様講演、トヨタ様、HONDA様デンソー様、アルプスアルパイン様など52社135名が参加し、熱く製造現場のデジタル化を議論しました。


― 所属と活動内容を教えてください。
スズキ株式会社生産本部ものづくり推進部主幹という立場で、
デジタル化で社内のものづくり革新に取り組んでいます。
他に静岡県福祉団体副理事長、湖西市福祉団体会長として活動して
おります。
― 取り組み背景や課題、活動の狙いを教えてください
[取り組み背景について]
会社方針を全社一丸となって推進しているなかで、私もミッションとして2030年に向けたスズキスマートファクトリー構築と人材育成に取り組んでいます。
個人的には、
①要素技術の壁を乗り越え、樹脂、鋳造、プレス他に対応可能な人材を育成する
②新技術導入に対応可能な人材を育成する
をスズキ流の「電承(デジタル伝承)」で達成することを目指しています。
①DX化=継承
②AIの活用=効率化
具体的な課題と背景をまとめると、ベテラン人材が高齢化・退職で熟練作業者不足、生産人口減少の今、現場作業者不足も喫緊の課題になっています。
作業者に頼らない「五感を生かした技術のデータ化とその継承」が必要と感じており、人口構成から見てあと5年という短い期間で達成しなければならない危機感があります。
このような状況から抜け出すためには抜本的な対策が必要と感じていました。

その解決のカギとなるのが、ノウハウの塊である「金型」にあると思います。
車の大部分、全体の80~90%は金型から作られており、部品不良課題も「金型」に起因していると前々から危惧していました。
その解決には、金型の表面温度変化や金型内部の挙動を動的に可視化し、熟練作業者の経験・思考を正しく継承する必要があると感じていました。
また、現場になぜデジタルが浸透しないか、その先導役のデジタル人材が不足していることにも大きな課題を感じています。
― 具体的にどのような取り組みでしょうか?

私自身がノウハウの継承に失敗した苦い経験があり、その対策ができずにいた事が取り組みのきっかけです。
その方法に悩んでいた時、株式会社KMCの紹介を受け、即刻、KMCに訪問しました。
無線センサ技術や研究開発・要素技術開発の取り組みに可能性を感じ、早速共同で改革に着手しました。
その時にKMC流「電承」という考え方に感銘し、スズキ流「電承」として導入することを決意しました。
[金型の表面温度センサ:サーモモニタリンの導入]

樹脂成形でもダイカスト鋳造においても金型表面温度は生産中に変動し、部品不良に直結することは周知の事実です。現場作業者は常にその温度変化に気を使いながら生産しています。
また、市販のサーモグラフィが、うまく運用されていないことが調査で分かりました。
原因は、データ送信が無線化されていないためセットアップに手間がかかること、ショットごとの自動撮影ができないこと、ハード的に大きく設置が困難なこと、ソフト的に放射率設定や特定の局所監視機能がないこと等、金型監視には向いていない事がわかりました。
生産技術者は、画素数の多い綺麗な画像を売りにしているサーモカメラを選ぶ傾向がありますが、KMCのサーモモニタリンは120×160ピクセルの温度監視機能がベースにあり、その画素数19,200ポイントの熱電対を金型に着けているのと同じです。製造現場や生産技術に「これ以上のポイントが必要か」、「その温度データをどのように活用するかが重要」であると説いて回っています。
実運用面では、12か所のエリア監視機能で死角なく監視ができ、且つエリア毎温度補正が可能で実用向きであるところが評価できます。ダイカストではトリプルトリガ機能による、離型剤噴霧前後の型温や鋳造品の温度の監視も有効です。温度精度についても熱電対で実際の型温を測定し、サーモソフトで補正することにより実用になることを確認しています。こういった、サーモモニタリン導入で終わらず、量産監視運用を見据えた自社の取り組みが重要だと感じています。何事も手の内化する努力がなければ本物になりません。
― 今後のサーモモニタリンの展開計画はどのように考えていますか?
製造現場では、不良の拡散防止が必須課題であり、サーモの金型表面温度に異常が見られた場合、現場への警告機能やダイカストや樹脂成形機などへの生産自動停止などFB機能の開発をKMCと構築を急いています。これは国内・海外工場共に必須であると考えています。
― どんな効果が期待できますか?また今後の計画を教えてください

成形トライ時に、CAEからプレス、樹脂、ダイカストなど各部門の若手とベテランも交えて議論を交わしました。
勿論、役職者への報告も行い「金型センサ・センシングによる動的変位」を共有できたことで、デジタル製造の道筋が見えました。
全社的なデジタルへの「生きた人材教育」の現場ができたことが大きな成果といえます。
スズキ流「電承」を始めて1年半、製造現場のデジタルへの抵抗や疑念もデータを見て議論できるようになってクリアになってきました。ここで得られた知見をシステムで伝承できるようにさらなる「電承」の進化を計画しています。あと5年がスズキスマートファクトリー構築と人材育成の勝負の期間と考えています。
それと、異常が起きたときには金型の破損状況を写真に残すようにしています。実際に稼働が始まってからは、機械の壊れた部分や製品不良の状態を現場で撮影して、そのまま記録できるようになっています。
[ご挨拶と感謝の気持ち]
このたび、株式会社KMC様との出会いを通じて、私たちのチームは大きな変化と成長を遂げることができました。私自身を含め、もともと現場での油清掃や積み込み作業を担っていたメンバーが、共通の目標に向かって挑戦する中で、未経験だったPLC制御ラダーの作成や生産設備との連動といった分野にも取り組むようになりました。この1年で、「継承」から「電承」へのジョブチェンジを果たし、技術的にも精神的にも大きく成長することができたと実感しております。
[継承世代としての責任]
私が今、はっきりと認識しているのは、現場の五感を持つ世代(40代後半〜50代)こそが「継承責任者」であるということです。逃げずに、未経験のことにも自ら挑戦し、失敗を通じて学ぶことこそが現場の仕事であり、現場のことは現場でデータ化するという姿勢が、これからのものづくりにおいて重要であると確信しています。
[今後に向けて]
改めて、これまでの株式会社KMC様のご協力に深く感謝申し上げます。
今後もご迷惑をおかけすることがあるかと存じますが、引き続きのご指導・ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(インタビュー後記)
組谷さんのデジタル改革と挑戦の強い意欲と熱量を感じたインタビューでした。金型・部品製造だけでなく、各工場の塗装や組み立て、加工、搬送、ロボットなどいろんなアイデアをお聞きし、その「電承」の可能性の夢を見ることができました。これからも、共に協力してデジタル製造を創造してきたいと思います。(KMC 佐藤)

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