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Case12 中小企業の挑戦から学ぶ、冷間鍛造事業のDX活用事例

  • mnakata85
  • 11 分前
  • 読了時間: 7分
KMC「Forging DX NAVI」活用事例インタビュー
伸光技研産業株式会社

自動車業界を中心に、主力製品のカシメナットを展開する伸光技研産業株式会社。


同社は約30,000型もの金型を保有していましたが、エコカー市場への参入をきっかけに管理すべき金型はさらに増加し、製品にはこれまで以上の耐久性と精度が求められるようになりました。


従来のアナログ管理では限界を感じ、生き残りをかけてDXへの挑戦を決断。以前から工場内の「見える化」には関心があったものの、他社システムは高額で導入に至らずにいました。そんな折、展示会で偶然目にしたKMCのQRコードを活用した金型管理ソフトウェアと、設備監視ソフトウェアの組み合わせが、自社に最適なDXの可能性を感じさせました。


今回、同社は「Forging DX NAVI」をKMCと共同開発。これまで抱えてきた課題への解決策や導入・定着に向けた工夫について、取締役工場長の加藤聡典様にお話を伺いました。


電承ファクトリー

第二工場 生産技術部 部長 四海 邦治 様
取締役 工場長 加藤 聡典様

― 改めて、貴社の事業の概要についてお聞かせください。

冷間鍛造機15台、タッピングマシン10台で、自動車や建設、電気分野で幅広く利用される「カシメナット」をはじめとした汎用製品を製造しています。

自動車関連製品が売上全体の7~8割を占めており、残りは建築や電気関連分野の製品です。

近年は鍛造に加えて、切削加工や検査機を活用した品質管理にも取組み、事業領域を広げています。


― 製造工程の中でどんな課題があったのでしょうか?

そうですね、一番はやっぱり設備の稼働状況が見えなかったことです。紙に書いたり口頭で報告したり、というやり方でしたので「停止したのはこの時間帯じゃないよね」とか「数が合わないよね」といったことがよくありました。結局データの信頼性が低くて、お客様から聞かれても“そうだろう”とか“だと思う”という推測で答えるしかなかったんです。曖昧な発生点からは曖昧な原因究明しか出来ないため、真の原因に辿り着けないとという危機感を感じていました。


それから在庫管理ですね、決算の棚卸でカウントしても「実際には在庫がない」とか、中古の金型を新品に入れてしまうようなミスがありました。どうしても人の判断に頼ってしまうので誤差が出やすく、正確性に欠けていました。正確なデータを得られず、金型寿命の適正化に向けてデータの信用性が無いので、定数交換数を設定するための確かなエビデンスを欠く事になります。


不具合が出たときも大変でした。過去の生産履歴を紙でさかのぼって調べるのですが、ロットを特定するのにすごく時間がかかる。金型の問題なのか、設備なのか、作業者のやり方なのかを突き止めるのに多くの記録を調べる必要があり苦労していました。


それと、対策履歴が作業者任せになってしまっていたのも課題でした。

「対策しました」とは言っても、いつからやったのか記録が残っていなかったり、小さい不具合が記録されないまま、大きな問題に発展してしまうこともあったんです。


設備の停止についても同じです。止まった理由や復旧にかかった時間が正確にわからない。改善活動は紙の記録をもとにやってましたが情報が正確に伝達出来ていないためそれを補うため1日に何度もミーティングをして情報を共有しても、細かい問題は埋もれてしまっていました。


― その課題に対して、何か対策を講じてましたでしょうか?

基本的には、作業者が紙に記録を残すやり方で管理していました。生産数や不具合の発生状況も全て紙ベースなんです。

あと、情報を埋もれさせないために、とにかくコミュニケーションの機会を増やしました。

朝は工場長とリーダーのミーティング、部署ごとのミーティングから始まり、昼も工場長とリーダーとの打合せから、続いて管理者・作業者も交えてのミーティング。

夕方にも工場長とリーダーがミーティング。--本当に1日中、会議をしているような状態でした。


― その対策では不十分だったということでしょうか?

やっぱり、人に頼っている限り限界があるんですよね。作業者もずっと設備を見張っているわけではないので、生産を優先してしまいます。そうすると、ちょっとした不具合や軽微な設備停止は記録に残さないままになってしまう。でも実際には止まっているんです。


紙や口頭の報告に依存すると、どうしても抜けやズレが出ますし、正確な履歴が残らないんです。設備の停止理由や時間もはっきり分からず、顧客に聞かれても「多分こうだろう」としか答えられない状況でした。


それに1日に何度もミーティングをしても、細かい問題はやっぱり埋もれてしまう。軽微な不具合こそ後々大きなトラブルにつながるのに、記録に残らないから改善のサイクルが回らないんです。


金型の管理も同じでした。結局は作業者の経験や判断に頼ってしまっていて、寿命がどれだけとか、対策後に変化したかといったデータが蓄積されない。これでは再現性のある改善につながらなかったんです。


― なぜKMCをパートナーとして選んでいただいたのでしょうか?

元々、「工場の見える化をやりたい」という思いはずっとありました。10年くらい前から関心はあったんですが、直接的に利益を生むものではないので、投資の優先順位は低く、「おまけ」みたいな扱いでした。実際に他社のシステムも検討しましたけど、表示機能だけでもかなり高額で、なかなか導入には踏み切れなかったんです。


そんな時に、展示会でKMCさんのブースを見かけて。QRコードを活用した仕組みを見て、

「あ、これならできそうだな」と感じました。加えて、KMCさんが持っている“金型IoTソフトウェア”と、私たちが注目してきた設備モニタリングの“Σ軍師Ⅱソフトウェア”。この2つを組み合わせれば、自分たちが求めていた設備の見える化と金型管理が同時にできるんじゃないか、と閃いたんです。

実際、設備と金型の両方をカバーしている会社は、他にはありませんでした。そのアイデアを相談したときに「一緒にやりましょう」と前向きに応えてくれたのがKMCさんで。それが決め手になりました。


― 現在の活用方法について教えてください

プラテン部に固定 サーモモニタリン

今は、作業者がタブレットで生産記録を残しています。

品番をQRで読み込めば、生産するための金型が呼び出され、生産開始となると、Σ軍師Ⅱのステータスが「生産中」に変わり、同時に色もスタンバイの灰色から緑に変わるので、稼働状況が一目でわかるようになっています。


もし設備異常が発生したら、その場でステータスが赤に変わるので、すぐに「何か起きたな」と気付ける。作業者が任意で止めた場合は黄色になって、その間の停止時間が自動でカウントアップされます。管理者はその時間を見れば、「これは小さな問題だな」「これは重大だな」と、重要度がすぐに分かる仕組みとしました。


さらに、生産を再開するときには、作業者が必ずタブレットに停止理由を入力しないといけない仕組みも取り入れました。

いわゆるインターロック機能です。これを実装したことで、理由が曖昧なまま再稼働されることがなくなりました。

ようやくデータが貯まってきたので、ダッシュボード機能を活用して分析を行い、対策を講じる予定です。


それと、異常が起きたときには金型の破損状況を写真に残すようにしています。実際に稼働が始まってからは、機械の壊れた部分や製品不良の状態を現場で撮影して、そのまま記録できるようになっています。




― システムの導入から現在まで、どんな問題があったか教えてください

元々のシステムはメカプレスや樹脂成形、ダイカストを対象に作られたシステムだったため、圧造業界向けではなかったんですね。だから、金型の考え方とか、使っている用語が自社の文化と微妙に合わなくて、「ん?」となる場面がありました。

例えば「対策」という言葉。現場では根本原因をつぶす恒久的な対応のことを指すのですが、システム上ではもっと軽い意味で使われていて、そこで食い違いがあったりとか。

言葉の意味の共有は苦労しました。


今も一部課題にはなっていますが、金型の使用する数が違うので弊社が扱う冷間鍛造の金型は一製品だけで多いものは100点ほどあり、それらを管理しようとすると管理の仕方も変わってくるので、システムの中でどのように表示させれば良いかとか、各メニューとの連携をどのようにするのかといった問題を解決するのが大変でした。


あと、現場にとっては「生産」が最優先です。先ほど話した通り、入力しないと生産できないインターロック機能を実装したのですが、現場は「早く機械を動かしたい」とのせめぎあいがあって、そこはジレンマを感じています。一時的に機械を動かして、後から入力できる仕組みも検討しています。


いずれにしても開発していくソフトでしたので、問題が発生するのは当たり前だというスタンスでしたが、KMCさんは問題が発生した事情に対して打ち上げすると対応・解決に向けて迅速に動いていただけたのでシステムについては無知な私たちにとっては安心して相談出来ました。


 
 
 

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