金型管理をDX化し、過去の不具合とメンテナンス記録を一元管理
紙資料との決別と脱エクセルにより、データでのノウハウ活用を推進
― 改めて、貴社の事業の概要についてお聞かせください。
(上田様)プレス金型を用いて、自動車のワイヤーハーネスに使用される端子の製造を行っています。建築部材の金具製造も一部行っていますが、製造品の99%は自動車向けです。本社は大阪府大阪市にあり、広島県広島市に営業所を構えています。生産拠点としては、滋賀県彦根市の彦根工場とベトナムのホーチミン市近郊にあるKBK VIETNAMの2ヶ所になります。
(椋橋様)最近はEV車や燃料電池車、ハイブリッド車といった電気自動車に関連した部品の新規開発を強化しています。会社方針として、営業・開発ともに電気自動車の分野を手厚く進めています。
― 自動車にかなり注力されているようですが、強みとしている点や得意としている点についてお聞かせください。
(上田様)電気自動車関連で申し上げると、古くは初代プリウスからハイブリッド車の部品製造に携わっております。EV車などの部品は今までに無いような形状であったり、工法も難加工であることが多いです。
当社の強みとしましては、お客様側で製品を設計される段階から一緒に関わり、「こういった形状のほうが作りやすいですよ」とか「QCD面でのメリットがありますよ」などご提案させていただいています。製品の形状が固まったら試作、試作がOKだったら量産へという形で、お客様と一体となって取り組むことができるというのが強みですね。
― 貴社で所有されている金型の数はどのくらいでしょうか。
(上田様)日々の製造で使うものとそうでないものがありますが、すべて合わせると400型はあります。新しい金型も年間で40型くらいは増えております。
業務本部 業務統括部
次長 椋橋 哲也 様
生産本部 彦根工場 第二生産部
リーダー 上田 和弘 様
金型のメンテナンス終了後、メンテナンス情報を金型IoTへ記録。チェックシートを紐づけ
生産終了後、金型が規定のメンテナンス時期に到達したのであれば定期メンテナンスへ、それ以外の金型は生産に問題なければ保管場所へ戻す前に点検を行いますが、メンテナンスの記録や点検結果はすべて金型IoTへ電子データとして記録しています。生産中、金型に不具合があったら修理に回しますが、保全側への修理依頼も金型IoTから行っています。
また、金型を定期メンテナンスする際、穴を開けたり外形を抜いたりするトリミング部品はすべて修繕か交換するという社内ルールがあります。
交換部品の数が多い場合は記録が非常に手間でしたが、今は「金型IoT」にメンテナンス情報を記録する際、交換部品の登録画面上にパンチやシムの寸法を入力する項目を設け、そこに数字を割り込ませて記録する形としました。入力部分にデフォルトで「L(長さ)→ シム→ 」と記載があり、矢印の後に数字を入れるだけです(下図)。
作業標準書・生産条件の読み出し
部品交換後の寸法入力欄。備考欄にデフォルトで項目を設定している
―― 「金型IoT」の運用を開始されてから、短期間でスムーズに立ち上げられていると思います。
(上田様)KMCさんとは「金型IoT」を導入する前に、「こんなことがしたい」「こんなことはできるか」といったやり取りを進めていましたので、当社側であらかじめ準備しておかなければならない部分はわかっていました。
今までのやり方をすべて押し通そうとするといつまでたっても平行線です。システム側に柔軟に寄り添って進められるよう、関係する部署のメンバーと話し合いを重ねて運用の流れを固めていきました。
- 話が変わりますが、金型の予防保全という観点では、これまでどのような取り組みを行ってこられたのでしょうか。
(上田様)金型IoTの導入前は設備からショット数を確認してエクセルに記録し、規定のショット数に到達するタイミングで定期メンテナンスを行っていました。現在は金型IoTにその日のショット数を記録しています。金型部品の交換サイクルについてもショット数で管理しています。金型ごとのメンテナンスサイクルは従来から決めています。例えば20万ショットで定期メンテナンスする金型でしたら、金型部品の交換も20万ショットごとに行うというような運用です。
金型メンテナンス計画のガントチャート
(上田様)金型の点検結果をチェックシートに記録しています。当社の金型管理として、生産後の点検、突発修理、定期メンテナンス、すべて点検項目が異なります。点検用、修理用、定期メンテナンス用とそれぞれのチェックシートを作ってあり、目的にあったものを使っています。
もともとは金型の点検のみでチェックシートを活用する予定でしたが、製造部では生産した製品の測定結果をチェックシートに記録するといった運用をしています。
チェックシート機能
ダッシュボードで集計している金型の保全コスト
― ありがとうございます。すでに金型IoTをかなりご活用されているように思われますが、導入後に感じられたメリットなどについてお聞かせください。
(上田様)記録を取る時間、特に金型のメンテナンス記録の作成工数は1枚あたり20~30分かかっていましたが、電子化したことによって50%くらい短縮されました。
(椋橋様)紙ベースの時は、作成した帳票を回覧して判子を押して次の関連部署に回して、という流れでしたが、すぐにデータで確認できるので部署間での回覧時間も短縮されました。それと、定期メンテナンスや修理を依頼した金型の状態もタブレット上で確認できるようになった点も大きいですね。これまでは工場の一番奥の作業場に行って、直接金型を確認しなければわからなかったので。
(上田様)もちろん、紙の使用量の削減にも繋がります。これまでは加工条件表や図面情報、製品の寸法データを記載するための記録票などを各工程や品番ごとにファイリングしておりました。今は金型のQRコードをタブレットで読み取ればその金型の情報が出てきます。必要な情報はタブレットから確認できますので、工程ごとに存在していたファイルが必要なくなります。弊社もSDGsやカーボンニュートラルを見据えた取り組みを進めておりますので、こうした点にも貢献できると考えております。
その他にも、金型管理をDX化したことはお取引先様や新規のお客様に対するPRポイントになります。「金型IoT」は金型管理だけでなく、生産数や材料、異常品の管理など多岐に渡るポイントをカバーした優れたソフトだと思っています。
― 金型管理をDX化する上での大きな目的でもあった、分析やノウハウの蓄積という点ではいかがでしょうか。
(上田様)こちらも紙ベースよりはるかにレベルアップできたと思っています。金型ごとの生産情報はもちろんですが、過去にどんなトラブルや異常があったのかといった情報は、以前であれば生産情報のファイル、金型のファイル、異常履歴のファイルといったあらゆるファイルから探しておりました。
今はパソコンやタブレットからすべて確認できますし、タブレットのカメラで不具合の箇所を写真として残すこともできます。発生した不具合の情報と、それに対して「いつ」「誰が」「どんな対策をしたか」を紐づけて見ることができるようになりました。
不具合情報とメンテナンス記録、写真データを紐づけての管理が可能
― 今、「金型IoT」に点数をつけるとしたら何点ぐらいになりますか。
(上田様)90点です。今は彦根工場での金型管理がメインですが、今後はベトナムの生産拠点にも「金型IoT」を展開していきたいと考えています。その他では設備管理への拡張や現在運用している生産管理システムとの連携、手書き日報の電子化などを計画しています。
(椋橋様)当社の使っている生産管理システムと連携ができると100点かなと思います。連携させたい項目としては各品番のその日の生産数、良品数、ロス数、段取り時間、生産時間などの、いわゆる日報情報です。これらをCSVデータにして生産管理システムに自動で取り込むことができれば、生産管理側の入力工数が大きく削減できます。作業者が二度手間にならないよう。1度の入力で全部に反映されるのが理想です。
― それでは最後に、「金型IoT」に期待したいことをお聞かせください。
(上田様)「金型IoT」はメニューで使用する文言を自由に変更できたりと、運用面での自由度が高いと思っています。あとは、表示する情報の並び方を自由に変更できると導入した会社ごとに適した形になるかもしれません。使用する会社ごとに見たい情報は違ってくるはずですので。
あとはグラフや集計数字などの情報が、ダッシュボードに行かなくても見ることができるようになると。生産管理ソフトだと、ボタンを押したらすぐに稼働率などのグラフが確認できたりしますので。
(椋橋様)分析メニューみたいなのがあるといいですね。不具合の傾向などいろいろなデータがグラフや数字でパッと出てくると良いかなと思います。
― お忙しい中、誠にありがとうございました。